同じ種でも住む地域によって大きさや色・形に変化が見られます。

蝶は羽があるので大きく移動する種もありますが、ほとんどの場合限られた地域で何千年・何万年と世代を繰り返しています。
そのため、地域・地域で微妙な変化が現われ、その産地ごとに価値観までも変わってくるものまであります。特に、ギフチョウやゴマシジミなどの蝶は地域ごとに、特徴的な斑紋の変化が見られるため、何百市町村もの標本を収集し、斑紋の変化を調査しているマニアも少なくありません。

また、小笠原のような孤立した島などでは特にその傾向が強く、その島独自の固有種(その島にしか生息しない種)を生み出しています。

一般的な変化としては寒冷地のものは小型化するものが多く、色彩的には明るくなる傾向にあります。
産地を移動した場合、形態的なものはその地の特徴が現れるものがありますが、斑紋や生態的な特徴は、その地で永く培われた遺伝的なものであるためすぐに変化するものではありません。

たとえば当地のものが絶滅してしまえば復活はありえないのです。他の産地のものを持ってきて放し、復活したとしてもあくまでも異物であり、かえって生態系に混乱を招くことさえあります。

北海道産のフタスジチョウは白い筋の部分が広く明瞭で明るく感じ、本州産は白い筋が細くなります。

フタスジチョウ(北海道産)

フタスジチョウ(本州産)
コヒオドシチョウの北海道産は一回り小型で本州産の子供のようです。

コヒオドシ(北海道産)

コヒオドシ(本州産
コムラサキは地域変異の少ない蝶なのですが、ここであえて取り上げて見ました。
コムラサキには下の写真のような遺伝的な2種類の型があり、以前は別種として扱われていましたが、同じ親から2型とも得られることが分かり同種であることが判明しました。
しかし、どの地域でも同じように2型とも現れるのではなく、北海道では@の普通型しか現れませんし、この愛知県では@Aの
両方が出現し地域によって多い・少ないがあります。このように2つの型の発生する割合が遺伝的に変化することは興味深いことです。

@コムラサキ(普通型)♂

Aコムラサキ(黒化型)♂
ギフチョウは地域変異の大きい種ですが一般の方が見てもみんな同じように見えるかもしれません。
ここでは、遺伝的にその地だけに稀に現れる特殊なイエローバンド型を紹介します。その他、イエローテール・マルギフ
などといろいろな型があります。

普通のギフチョウ

イエローテール型