季節型
蝶は完全変態といい、卵から幼虫になり、蛹を経て成虫となって一世代と言うことになります。 世代交代は、年一回と思っていらっしゃる方も多いと思いますが、種類によっては2回・3回と繰り返し、モンシロチョウでは年に5・6回(名古屋)も世代を繰り返すのです。

ですからモンシロチョウやアゲハははかない命と言われながらも、春先から晩秋までいつでも見ることが出来るのですね。この発生回数(年に何回世代交代し、成虫が現れるか)は地域によって変化するものも多く、寒冷地では少なく、暖地では多くなる傾向があります。

季節型とは世代を繰り返す中で、羽化(蛹から成虫になること)する季節によって形態的な変化が現れる現象です。たとえば蛹などで越冬し、春に成虫になったものを「春型」と呼び、これ以後に発生したものを「夏型」と呼んでいます。また、成虫で越冬した蝶が春に産卵し、夏に成虫になったものを「夏型」と呼び、その夏型以後に発生したものを「秋型」と呼んでいます。

日本でも季節変化がはっきり現れる地域で多く、南西諸島のような年中温暖な地域では顕著な季節型が表れません。海外では、乾季や雨季のはっきりした地域でも「乾季型」「雨季型」の季節型が現れる種もあります。

野鳥などでも幼鳥期、繁殖期と衣替えをするものや、季節によって色を変えるもの(雷鳥など)が多くありますが、これはあくまでも一世代のうちでの変化であり、蝶のように世代ごとに変化する季節型とは全く異なるものです。


下の写真はサカハチチョウといい、季節型の顕著な例としてあげられる蝶です。
左の2頭は、春型の雌雄で、右側は夏型の雌雄です。分かりやすく言うと左の春型から生まれた卵が夏に右の夏型の蝶になり、その夏型から生まれた卵が翌春に春型として現れるのです。
サカハチチョウ
サカハチチョウ♀♂(春型)

サカハチチョウ♀♂(夏型)

       アゲハ
右の写真は、北海道特産(日本では北海道にしか生息しない)のアカマダラと言う蝶です。
こちらも2頭が別種のように見えますが、季節型の違いで同じ蝶なのです。

アカマダラ
アゲハチョウ科やシロチョウ科などのほとんどは、春型は小型で明るい色をしており、夏型は大きく黒っぽくなる傾向があります。

アゲハチョウ(春型)

アゲハチョウ(夏型
ベニシジミの夏型は黒化し、秋深くなるとまた明るい紅色になります。
ベニシジミ
ベニシジミ(春型)

ベニシジミ(夏型)
普通は春型の方が小さい種が多いのですが、ゴマダラチョウやヒメウラジャノメでは春型の方が大きくなります。

ゴマダラチョウ(春型)

ゴマダラチョウ(夏型)

ヒメウラジャノメ(春型)(裏面)
ヒメウラジャノメ
ヒメウラジャノメ(夏型)
下の3種の蝶は、この平針辺りでもよく見かける蝶です。
いずれの蝶も夏型と、秋型を比べていただくと、翅の周り角が鋭く尖っているのがお分かりいただけると思います。このように秋型は、翅形が鋭角になるものが多く、北海道のような寒冷地では鋭角のものしか現れないものもあり、幼虫期の気温が大きく影響しているのではないかと思われます。

ウラギンシジミ(夏型)

ウラギンシジミ(秋型)

クロコノマチョウ(夏型)

クロコノマチョウ(秋型)

キタテハ(夏型)

キタテハ(秋型)